研究概要 |
広範な大脳白質病変を伴うLeukoencephalopathy with vanishing white matterは、mRNAの翻訳開始において重要な調節因子であるEIF2B(eukaryotic translation initiation factor 2B)の遺伝子異常により生じる。今年度、我々は成人例におけるEIF2B5の新しい遺伝子異常を報告した(Matsui Metal.Eur Neurol 2007;57:57-58)。 また、今年度は、昨年得られた患者剖検脳の結果をもとに、慢性脳虚血の動物モデルを用いて検討した。慢性脳虚血作成後30日目のマウスの脳を用い、HE,LFB染色にて大脳白質病変を評価後、免疫組織化学にてリン酸化elF2α、CREB-2、リン酸化GCN2、リン酸化MAPK、GADDの発現を検討した。その結果、検索した範囲では、リン酸化elF2αの発現に明らかな差を認めなかった。CREB-2、リン酸化GCN2、リン酸化MAPKに関しては、これまでの所、発現を認めていない。 以上の事より、Binswanger型白質脳症の大脳白質病変形成において、リン酸化eIF2αが関与していると推測されるが、詳細な分子メカニズムに関しては、今後の更なる検討が必要であるように思われる。
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