研究概要 |
我々は多因子遺伝疾患である孤発性パーキンソン病(PD)感受性遺伝子を明らかにするために、候補遺伝子アプローチを進めてきた。一次スクリーニングとして患者・対照各190人を対象に、121個の候補遺伝子上の計268個のSNPs(一塩基多型)を関連解析してp<0.05のSNPを22個得た。二次スクリーニングとして、これらの22個のSNPsを患者882人対照938人に増やして関連解析した結果、α-synuclein(SNCA)遺伝子のintron 4上に存在するSNP0070にp=5.0x10^<-10>という極めて強い関連を見出した。 SNCAは4番染色体上にあり、6個のexonを持つ全長117kbの遺伝子である。このSNP0070の周辺でSNCAを含む約420kbの領域を29個のSNPsを用いて連鎖不平衡解析を行うと、SNCA全域がひとつのLD block(D'>0.9)にのっていた。また、SNP0070を含めて高いr^2値(>0.85)をとるSNPsがintron 4,3'UTR,3'-flankingに計6個あり、全てPDと強い関連(p=2.0x10^<-9>-1.7x10^<-11>)を示した。Haplotype関連解析では単独のSNPを下回るp値は見出せなかった。 SNCA蛋白はPDの病理学的特徴であるLewy小体の主要成分である。最近、正常なSNCA遺伝子領域の重複もメンデル型PDの原因となることが明らかになり、SNCAの発現量が孤発性PD発症にも影響すると考えられている。そこで、Real-time RT-PCR法によりSNCA遺伝子発現レベルのSNP0070(C/T, CがPD関連アレル)の遺伝子型ごとの違いを解析した。剖検脳前頭葉でのSNCA発現レベルはCC>CT>TTの傾向がみられた。以上の結果から、我々は孤発性PDの碓実な感受性遺伝子として、SNCAを同定することができた。
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