研究概要 |
平成17年度は、Siah-1による凝集体形成機序の研究を進めるにあたり、解析に適したパーキンソン病モデル神経の作製を試みた。a-synucleinは常染色体優性遺伝性パーキンソン病PARK1およびPARK4の原因遺伝子であり、またその遺伝子産物はレビー小体の構成蛋白質であることから、α-synucleinはパーキンソン病の発症に関与する重要な蛋白質として注目されている。われわれはA30P、A53T変異型(PARK1)および野生型(PARK4)のα-synucleinを発現させたマウス胚性幹細胞(ES細胞)を確立し、ドパミン神経に分化誘導した。この細胞は、脱分極刺激によりドパミンを放出し、パッチクランプ法を用いた解析では中脳黒質緻密層のドパミン神経細胞とほぼ変わらぬ特性を示した。また、長期培養すると神経細胞死を来たした。この神経細胞ではα-synucleinからなる細胞内凝集体が観察されるとともに、パーキンソン病発症の分子機構に関与するSynphilin-1、Parkin、PINK-1などの発現がみられた。現在、このパーキンソン病モデル神経を用いて解析を進めている。その過程で、われわれはSiah-1が、常染色体劣性遺伝性パーキンソン病(PARK7)の原因遺伝子であるDJ-1と結合することを発見している。PARK7発症の原因となる変異型DJ-1(M261,L166P)、野生型DJ-1遺伝子を作製し、Siah-1との結合実験、ユビキチンアッセイなどによる解析を進めている。 最終年度となる来年度は、Siah-1のパーキンソン病発症における機能の解析をさらに進めていく予定である。
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