当該研究の目標は、マウスにおけるプロテアソーム阻害薬を全身投与することによってパーキンソン病モデルを作成し、かつ最適な作成プロトコルを確立する。さらにマウス脳を免疫組織化学的さらに生化学的解析に解析し、神経細胞変性の機序を明らかにすることを目指す。 本年度の具体的な研究計画は、プロテアゾーム阻害剤の慢性投与によるパーキンソン病モデルマウスの確立をめざすことにある。特に、使用する薬剤の種類と量の決定をめざした。 (1)投与プロトコールの確立 実験動物(C57BLマウス)に親油性プロテアゾーム阻害剤(PSI)を慢性投与し、行動学的変化を観察するとともに組織化学的検討によって神経細胞の変性を解析した。マウスに高用量のプロテアゾーム阻害剤(PSI 10-25mg/kg)を投与した場合、パーキンソン病類似の状態が惹起されることが判明したが、時に致死的となり、全身性の衰弱が惹起されてしまい、モデルとしては不適当であることが明らかとなった。次に、より少量(2.5-5mg/kg)で反復投与した場合、投与中には、運動量の減少が明らかに見られたが、投与終了後から約1週間で無動状態から回復した。免疫組織化学的には中脳ドパミン神経細胞の減少はみられなかった。またαシヌクレインの凝集も見られなかった。 マウスのモデルにおいては、プロテアゾーム阻害剤の使用量の決定は困難であり、さらなる長期的投与の効果を検討する必要があると考えられる。
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