筋ジストロフィー鶏におけるα-ジストログリカンの糖鎖修飾の異常 我々はこれまでの研究から筋ジストロフィー鶏のα-ジストログリカンには糖鎖修飾の異常が生じている可能性があることを見いだし、同鶏のヒトにおける先天性筋ジストロフィーのモデル動物としての有用性を提唱してきた。本年度の主要な研究目標は、同鶏のα-ジストログリカンの糖鎖修飾の異常を明らかにすることにあった。このために、同鶏の骨格筋をTriton X-100により可溶化して各種レクチンビーズによる分画を行い、これらビーズと結合したα-ジストログリカンをウエスタンブロットにより検出した。この結果、筋ジストロフィー鶏のα-ジストログリカンはMAMへの結合がコントロールに比較して著減している一方で、PNA、VVA-B4への結合は著しく増加していた。これらのことから、同鶏のα-ジストログリカンにはSiaα2-3Galβがコントロールに比べて減少しており、逆にGalβ1-3GalNAcやGalNAcといった糖鎖構造が非常に多く含まれていることが明らかとなった。さらにレゾルシノール法を用いたシアル酸定量の結果、筋ジストロフィー鶏の骨格筋においてシアル酸含量の明らかな低下が認められた。これらのことから、同鶏のα-ジストログリカンには糖鎖修飾の異常が確かに生じており、なかでもシアル酸の減少がα-ジストログリカンとそのリガンドであるラミニンとの結合性低下をまねいている可能性が推測された。さらに、これら糖鎖修飾の異常がジストログリカン遺伝子(DAG1)の変異、すなわちN-結合型あるいはO-結合型糖鎖修飾部位の点変異あるいは欠失により生じている可能性を検討するために、同鶏のDAG1の塩基配列の決定を行った。骨格筋よりDNAを抽出し、全エクソンのダイレクトシークエンスを行った。この結果同鶏においてDAG1の変異は見いだされず、α-ジストログリカンの糖鎖修飾異常はジストログリカンの変異によるものではないことが明らかとなった。
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