先天性筋ジストロフィーの病態解明を目標として、モデル動物である筋ジストロフィー鶏とフクチン欠損キメラマウスの神経筋障害に関する検討を行った。筋ジストロフィー鶏を用いた研究では、1)骨格筋においてα-ジストログリカンの糖鎖修飾の異常とラミニン結合能の低下があること、2)α-ジストログリカンには2つの分子種があり、分子量の小さいα-ジストログリカン(S-α-ジストログリカン)にはラミニン結合能がないこと、3)レクチンによる糖鎖解析の結果、筋ジストロフィー鶏のα-ジストログリカンはコントロールと比較してGalβ1-3GalNAc構造が増加している一方で、Siaα2-3Gal構造が減少していること、4)骨格筋や心筋においてβ1インテグリンの発現が亢進していること、を明らかにした。また、フクチン欠損キメラマウスを用いた研究では、1)同マウスの神経筋接合部は小さく断片化した形態を呈すること、2)同神経筋接合部ではアグリンの発現とアグリンに対する結合能が低下しており、これが神経筋接合部の形態異常の原因である可能性があること、3)同マウスの末梢神経において有髄線維の減少とradial sortingの障害が存在すること、4)同末梢神経にはα-ジストログリカンの糖鎖修飾の異常とラミニン結合能の低下があり、これが末梢神経の髄鞘異常の一因である可能性が高いこと、などを明らかにした。一方で、yeast two hybrid法を用いてβ-ジストログリカンの細胞内ドメインと結合する蛋白質としてplasma membrane Ca^<2+> ATPaseをクローニングしたが、pull-downアッセイや免疫沈降法などにより蛋白質レベルでの結合は確認できず、その相互作用は非常に弱いものであると考えられた。
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