研究概要 |
実験的アレルギー性脳炎(Experimental Allergic Encephalomyelitis : EAE)は、多発性硬化症の疾患モデルとされている。我々はケモカインCCL19/21の発現を欠く突然変異マウス(Paucity of Lymph Node T cells : plt)を見出し、免疫反応におけるこれらのケモカインの役割を検討しているが、pltマウスにEAEの誘導を行ってもほとんど発症しないことを見出した。pltマウスではなぜEAEの発症がみられないのか、検討を続けているが、本研究課題を実施することで次のような結果が得られた。 1.これまでEAEを発症するのは、MOG (Myelin-oligodendrocyte glycoprotein)ペプチドなどに特異的なTh-1細胞によるとされていたが、最近の報告によるとTh-1でもTh-2でもなく、IL-17を産生するヘルパーT細胞(Th-17)によってEAEは発症する。pltマウスをMOG_<35-55>ペプチドで免疫しても、所属リンパ節にTh-IL-17が認められなかった。 2.IL-17の産生には、抗原提示細胞によるIL-6、TGF-β、IL-23が必要とされている。免疫したpltマウスの所属リンパ節細胞ではIL-6とTGF-βの産生は野生型マウスと同等であったが、IL-23の産生が低下していた。CCL21を添加すると、IL-23と皿,-17の産生が回復した。 3.CCL23を添加することで、pltマウスCD4^<+T>細胞にはIL17を産生するTh-17が誘導された。 4.CCL21をpltマウスCD4^<+T>細胞に加えたのでは、Th-17は誘導されなかった。 5.CD11c^+樹状細胞にCCL21を添加するとIL-23産生の回復を認めた。 6.CCR7欠損マウスの樹状細胞にCCL19やCCL21を加えても、IL-23産生はみられなかった。 これらの結果から、pltマウスではTh-17の誘導が出来ないこと、この誘導に必要な樹状細胞によるIL-23の産生が低下していることが判明した。このIL-23産生低下は、CCL19/CCL21によるCCR7の刺激が欠如しているためであることも判明した。 今後は抗IL-23抗体を用いるなどして、発症後のEAEを抑制できるか、すなわちMS患者の治療に応用できるかどうか、検討していきたい。
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