アデノシンA_<2A>受容体はドパミンD_2受容体と相反する作用がある。アデノシンA_<2A>受容体拮抗薬は、ジスキネジア発現が少ない治療薬として期待されている。しかし、パーキンソン病患者のアデノシンA_<2A>受容体の研究は、いまだ剖検脳の検討しかない。東京都老人総合研究所はアデノシンA_<2A>受容体を画像化する放射性薬剤^<11>C-TMSXを開発、世界に先駆け、ヒトでのアデノシンA_<2A>受容体PETに成功している。本研究ではこれをパーキンソン病に応用した。 未治療のパーキンソン病患者7例および健常者5例に^<11>C-TMSX PETを行った。初期診断を確実にするため、患者全例に^<11>C-CFT PETを用いたドパミントランスポーターの測定、^<11>C-raclopride PETを用いたドパミン受容体分布の測定を行った。^<11>C-TMSX PETは60分のダイナミックスキャンを行った。その結果、健常者とパーキンソン病患者に被殻アデノシンA_<2A>受容体分布の有意差は認めなかった。しかし、パーキンソニズムの左右差に着目し、重症側と軽症側の被殻アデノシンA_<2A>受容体分布を比較したところ、軽症側と比べ重症側の方が有意に低下していることが明らかになった。パーキンソン病では、ドパミンD_2受容体はドパミン分泌の低下の代償として増加する。アデノシンA_<2A>受容体分布は、ちょうどドパミンD_2受容体と逆の変化を示した。この成果は、2006年5月にボストンで開催されたBoston2006と、10月京都で開催された第10回国際パーキンソン病学会で報告した。健常者データの論文は投稿中である。 また、上記未治療例における、抗パーキンソン病薬投与開始後のアデノシンA_<2A>受容体の変化についても検討を開始した。現在1例のみ解析を完了しており、治療後に被殻アデノシンA_<2A>受容体分布が増加していることが観察できた。来年度で治療後のデータを蓄積する。
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