研究概要 |
アデノシンA_<2A>受容体はドパミンD_2受容体と相反する作用があり、アデノシンA_<2A>受容体拮抗薬は新しい抗パーキンソン病薬として注目されている。東京都老人総合研究所はアデノシンA_<2A>受容体を画像化する放射性薬剤11C-TMSXを開発、世界に先駆けヒトでのアデノシンA_<2A>受容体PETに成功した(Mishina M et. al., Synapse2007)。本研究ではこれをパーキンソン病に応用した。 未治療のパーキンソン病患者7例および健常者6例に11C-TMSX PETを行った。その結果、被殻アデノシンA_<2A>受容体分布はパーキンソン病で低下傾向にあった。パーキンソニズムの左右差に着目し、重症側と軽症側の被殻アデノシンA_<2A>受容体分布を比較したところ、軽症側と比べ重症側の方が有意に低下していた。パーキンソン病では、ドパミンD_2受容体はドパミン分泌の低下の代償として増加するが、アデノシンA_<2A>受容体分布はドパミンD_2受容体と逆の変化を示した。この成果は、2007年6月にシカゴで開催された13th Annual Meeting of the Organization for Human Brain Mappingで報告した。 さらに、抗パーキンソン病薬投与開始後のアデノシンA_<2A>受容体の変化について検討した。治療後、ドパミントランスポータとドパミンD_2受容体は全例で低下したが、被殻アデノシンA_<2A>受容体分布は増加4例、減少2例であった。アデノシンA_<2A>受容体は睡眠やジスキネジアの関連が報告されている。治療による反応が患者により異なることから、アデノシンA_<2A>受容体の変化の多様性が、抗パーキンソン病薬の副作用発現の有無に関係している可能性が示唆された。この成果は、2007年5月に名古屋で開催された第48回日本神経学会総会において報告した。 以上の成果について、現在論文を執筆中である。
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