研究課題
本研究は、MRIによる脳の領野間の機能的結合性(ファンクショナルコネクティビティ)解析法を開発し加齢脳研究に応用することを目的とした。探索的多変量解析法の1つである独立成分分析法(independent component analysis)および共分散構造解析法・構造方程式モデリング(structure equation modeling)をfMRI機能的結合性解析に導入し、条件課題の変化に伴い変調される信号動態を領域間の結合強度というスケールで評価する事を可能にした。また、タスクパラダイムが存在しない安静状態のみのfMRIデータに於いても、信号変化が同調する空間コンポーネントとして脳領域を分類する事に成功した。しかし、トラクトグラフィによる経路情報パラメータの初期条件への設定の試みは、単に空間的に近接する条件では適合させることが困難であった。現在、これらに加え皮質容積など解剖学的形態情報を導入し、相互情報量(mutual information)を用いた多角的なデータ分析を継続しているところである。また、本法の臨床応用の可能性を探るため、閉塞性脳血管障害患者の安静時機能的結合性測定を実施した結果、患者群では若年健常群に比較し領域間・領域内結合性が低下する傾向が見られたが、これらの群ではバックグラウンドに存在する脳活動に由来しない生理的信号変化の影響を強く受ける傾向もみられるため、フィルタリング処理の改良が必要であると思われた。しかしながら、本研究において、コネクティビティというスケールにて安静時における基礎的脳活動の観測を可能としたことは、特に脳機能イメージングの加齢医学・臨床医学分野への応用に対して大きな意義があると考える。
すべて 2006
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The Journal of Neuroscience 26・34
ページ: 8804-8809
映像情報 Medical 38・10
ページ: 965-970