研究概要 |
#1.VEGF120と胎盤成長因子2(PIGF2)による感覚性末梢神経炎の遺伝子治療 ストレプトゾトシンで誘発した糖尿病マウスモデルの足背痛覚閾値をpaw-pressuree試験で測定し痛覚鈍麻が生じていることを確認した。このマウス前脛骨筋にVEGF120ないしPIGF2を雛現するプラスミド、あるいはコントロールプラスミドを筋注し電気穿孔法で遺伝子導入し、2-4週後に痛覚閾値を測定し痛覚鈍麻の改善を調べた。VEGF120遺伝子導入ではVEGF120の発現は導入1週間後に前脛骨筋のVEGFをELISA法で測定するとコントロールに比し10倍ほどの上昇を認めたが、痛覚閾値の改善は認めなかった。VEGF120はflt-1とflk-1に働きnrp-1とは結合しないことから、痛覚鈍麻の改善にはnrp-1受容体が重要なことが示唆された(J Gene Med,2006)。そこでflt-1とnrp-1に働きflk-1に結合しないPIGF2を発現させると、2-3週後に有意な痛覚閾値の改善を認め、痛覚鈍麻の改善にはnrp-1受容体が必要なことが示された。 #2.PIGF2遺伝子治療での痛覚鈍麻改善機序の解明 痛覚鈍麻改善機序の解明のため痛覚鈍麻を有する糖尿病マウスと、PIGF2遺伝子浩療を行い痛覚鈍麻を改善させた糖尿病マウス、正常マウス3者の坐骨神経をトルイジンブルーで染色し、有髄神経線維や神経内膜血管を観察し比較した。まず正常マウスに比し糖尿病マウスでは有髄神経線維の脱落や血管数の有意な減少は認めなかった。またPIGF2遺伝子治療糖尿病マウスでも有髄神経線維の変化はなく血管数の有意な増加はなかった。これらの結果から痛覚鈍麻を有する糖尿病マウス末梢神経は形態学的には正常で、末梢神経の機能異常により痛覚鈍麻が生じている可能性が示唆された。また円GF2遺伝子治療ではnrp-1受容体を介してこの機能異常が改善されたと考えられた。 さらに正常マウス、痛覚鈍麻を有する糖尿病マウス、PIGF2遺伝子治療で痛覚鈍麻を改善させた糖尿病マウス3群の後根神経節mRNAを、DNAマイクロアレー(約32000の遺伝子)で解析し比較した。その結果痛覚鈍麻を有する糖尿病マウスで変化していた約200の遺伝子発環が遺伝子治療後正常化しており、これらは痛覚鈍麻改善に関係する遺伝子群であることが示唆された。
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