研究概要 |
昨年度同様、脳主幹動脈閉塞症における脳虚血による一次的障害としての虚血性神経細胞障害の病態を、PETと11C-Flumazenilを用いて中枢性benzodiazepine受容体密度を測定し、明らかにした。脳主幹動脈のアテローム血栓性閉塞により局所脳組織灌流圧が低下して生じる血行力学的脳虚血が選択的神経細胞障害を引き起こすことを、脳主幹動脈閉塞症患者を対象とし、形態画像上異常のない大脳皮質におけるbenzodiazepine受容体低下を示すことで、ヒト多数例で明らかにしてきた。今年度は、1)benzodiazepine受容体低下が、酸素摂取率上昇(血行力学的脳虚血の重症度)と関連していることを明らかにし,2)さらに、経時的検討により、脳循環障害の悪化とbenzodiazepine受容体低下進行との関連も示し、血栓性脳主幹動脈閉塞症では、慢性的な脳虚血が選択的神経細胞障害の原因となることを示した。これらの結果は,バイパス手術による神経細胞障害予防の可能性を示唆した。また神経保護作用を有する薬剤(statin系薬剤)を内服している患者では、benzodiazepine受容体低下の程度が軽いことも明らかになり、内科的な神経細胞障害の予防の可能性も示すことができた。脳主幹動脈閉塞症における一次的虚血に伴う神経細胞障害の自然経過、脳循環障害の程度との関連、治療による効果などについて、現在さらに経過観察による検討を継続している。本研究により、中枢性benzodiazepine受容体密度の定量測定により、生体で虚血性神経細胞障害のモニタリングができる可能性がはじめて示された。
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