研究課題
基盤研究(C)
平滑筋細胞の幼若化現象は一定の生体反応としてとらえられている。動脈硬化巣にみられるこのような平滑筋細部の変化は連続したものであり、多彩な様相を呈する。病巣内での分化、脱分化の機序を明らかにすることは、病巣の形成および治癒過程の機序を解明するものである。本研究の目的は、動脈壁内膜に発現し遊離型分化抑制因子LR11の平滑筋細胞における発現動態、脱分化作用機序を明らかにすることである。本年度下記について終了した。1.LR11ノックアウトマウスの作成Lr11-/-、Lr11-/+マウス共に出生、成長に明らかな障害を認めなかった。LR11-/-の大腿動脈にカフ傷害を行うことにより内膜肥厚をLR11+/+マウスと比較した。LR11-/-マウスの傷害一ヶ月後の内膜肥厚はLR11+/+マウスに比べて有意に抑制された。LR11-/-マウス大動脈より培養平滑筋細胞を調整した。PDEF刺激下の遊走能はLR11+/+マウスに比べて有意に低下していた。2.遊離型LR11の機能解析ウサギLR11cDNAより膜貫通領域および細胞内域を欠失したcDNAを作成しCOS細胞に発現させ分泌可能型LR11蛋白を調整した。分泌可溶型LR11は、平滑筋細胞の遊走能促進作用に加えて、培養マクロファージの接着能、脂質蓄積能を亢進した。3.薬剤によるLR11遺伝子発現調節平滑筋細胞のLR11遺伝子発現はPDGF-BBにより誘導され、ピタバスタチンにより濃度依存性に抑制された。LR11過剰発現細胞の亢進した遊走能はスタチンにより抑制されなかった。これらの研究成果から、動脈壁内に発現し遊離型分化抑制因子LR11の平滑筋細胞における発現動態、作用機序を明らかにすることに成功した。本研究成果は交付申請書に計画したものであり、ほぼ100%の研究成果を得た。
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Arterioscler Thromb Vasc Biol. (Published online)
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