研究概要 |
平成18年度は科学研究費の補助を受け、平成17年度に得た結果をもとに、新しいセリンキナーゼ活性化機構とインスリン抵抗性発症に関して、更に検討を進めた。すなわち平成17年度は、IRS-1のセリンリン酸化を促進するインスリン抵抗性惹起刺激の同定として、IL-1α刺激を用いた検討を行った。種々のセリンキナーゼの活性化とIRS-1のセリンリン酸化の関連について調べたところ、活性化される複数のセリンキナーゼのうちJNKやmTORが特にIRS-1のセリンリン酸化に重要である点を見出し報告した(Molecular Endocrinology20,114-124,2006)。本年度はこの結果を基に、長時間IL-1α処置がインスリンシグナルに与える影響について検討を進めた。その結果、短時間IL-1α処置はIRS-1のセリンリン酸化を促進するものの、下流のインスリンシグナルを抑制する効果は弱いこと、長時間処置後、SOCS3が発現誘導され、それにともなってIRS-1のdegradationが促進されること、また下流のインスリンシグナルもより強力に抑制されること、などを見出した。現在論文を投稿中である。 更に、IRS-1のセリンリン酸化とSOCSの発現の関連について検討をすすめ、TNFα刺激によるインスリン抵抗性の発現にも、IRS-1のセリンリン酸化だけでなく、SOCS3の発現誘導が重要であることを見出した。現在論文を投稿(revise)中である。 また、チアゾリジン誘導体であるピオグリタゾンが、IRS-1のセリンリン酸化ばかりでなく、SOCS3の発現抑制を介してインスリン抵抗性を改善するとの結果をDiabetes誌に報告した。
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