研究課題
基盤研究(C)
女性は、更年期以前では糖尿病の発症率が低いが、それ以後は上昇する。また、妊娠後期にはインスリン抵抗性が高まることが知られている。2型糖尿病の病態として重要な、女性でのインスリン抵抗性には、性ホルモンが関与していることから、エストロゲンがインスリン感受性を調節する分子メカニズムの解明を行った。脂肪細胞より分泌されるアディポカインの中で、アディポネクチン、レプチン、Tumor necrosis factor α(TNFα)はインスリン感受性の調節に重要な役割を担っている。そこで、エストロゲンがアディポカインの分泌に及ぼす影響を検討した。生理的濃度のエストロゲン(E2;10^<-8>M)の3T3-L1脂肪細胞への投与は、アディポネクチンの分泌を亢進させ、レプチンの分泌を低下させた。また、TNFαの分泌には影響を与えなかった。一方、高濃度エストロゲン(E2;10^<-5>M)は、アディポネクチンの分泌を低下させ、レプチンとTNFαの分泌を亢進させた。さらに、エストロゲンがマウス個体での耐糖能に及ぼす影響を検討した。マウスの卵巣を摘出すると、経口血糖負荷試験により、耐糖能とインスリン感受性の悪化を認めた。生理的濃度のエストロゲンをマウスに投与すると、耐糖能とインスリン感受性は改善した。一方、高濃度のエストロゲンを投与すると、それらは更に悪化した。以上より、生理的濃度のエストロゲンは、主に脂肪細胞でのアディポネクチンの分泌を亢進させることでインスリン感受性を高め、また、高濃度のエストロゲンはアディポネクチンの分泌を低下させ、TNFαの分泌を亢進させることで、インスリン抵抗性を惹起することが示唆された。更にエストロゲンは、個体においても、濃度依存性に二相性の特徴を有して耐糖能とインスリン感受性を調節することが明らかとなった。
すべて 2006
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Endocrinology 147
ページ: 1020-1028
Pharmacology & Therapeutics 112
ページ: 799-809
Endocrinology 147(2)