研究概要 |
LDL受容体ファミリーの一員であるVLDL受容体は末梢組織(心筋・筋肉・脂肪組織)においてリポ蛋白リパーゼ(LPL)と協奏してTGリッチリポ蛋白の取り込みに寄与している.心筋・筋肉細胞はそのエネルギー代謝の供給源として糖・脂肪酸の取り込みからATP産生を行っている.LPLは心筋・筋肉・脂肪組織から産生され,組織周囲の毛細血管内皮細胞においてTGリッチリポ蛋白に作用してTG分解作用を担っている.TG分解により産生される遊離脂肪酸はCD36・FABP(Fatty acid binding protein)などにより細胞内に取り込まれβ酸化に利用されている.一方,リポ蛋白粒子であるIDLはVLDL受容体により直接取り込まれエネルギー代謝に利用されることを提唱してきた. 敗血症状態における心筋代謝異常の機序を検討した1)LPS(lipopolysaccharide)投与マウス心筋およびラット培養心筋細胞おいて,心筋VLDL受容体発現低下とβ-VLDLの取り込み低下が認められた.2)LPSによるVLDL受容体発現低下はInterleukin(IL)-1βを介する現象であることが証明された.3)さらにHsp(Heat shock protein)90がIL-1βを介するVLDL受容体発現低下に関与することが明らかにされた.(結論)敗血症状態における心機能低下が心筋VLDL受容体発現低下による可能性が示唆された.
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