研究概要 |
VLDL受容体はLDL受容体と類似した構造を持つが,脂肪酸代謝が活発な組織(心臓・筋肉・脂肪組織)に強発現しており,TG水解酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)と協奏して,TG-richリポ蛋白代謝に関与している.一方,LDL受容体はTG-richリポ蛋白とコレステロールrichリポ蛋白(LDL)ともに認識し,特に肝細胞においてリポ蛋白粒子を細胞内に取り込んでいる.今回,筋肉細胞におけるリポ蛋白粒子の取り込み過程を検討した. 筋肉細胞ではTG-richリポ蛋白(VLDL,β-VLDL)の取り込みを認めるが,コレステロールrichリポ蛋白(LDL)の取り込みがないことが判明した.また,ノーザンブロット・ウェスタンブロットによる発現を検討すると,VLDL受容体のmRNA・蛋白発現は確認できるが,LDL受容体の発現は皆無であり,唯一QuantitativeRT-PCR法にてLDL受容体mRNAの増減を検討できるのみであった.LDL受容体は転写因子SREBPを介したステロール制御を受けるが,筋肉VLDL受容体はステロール制御を受けなかった.しかし,筋肉VLDL受容体は低糖濃度状態でAMPK活性化を介した正の発現制御を受けており,糖欠乏状態(ATP枯渇状態)においてVLDL受容体発現増加を介するTG-richリポ蛋白の取り込みからの脂肪酸供給がなされることを示唆していた. 絶食時における血中TG低下機序の一つの要因が,筋肉VLDL受容体を介するTG-richリポ蛋白の取り込みによるものと推定された.
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