研究概要 |
腎症の発症・進展に関与する新たな治療標的分子を探索するため、2型糖尿病モデル動物であるdb/dbマウス(1.5、2.5、3.5、4.5月齢)と同月齢のコントロールマウスであるdb/mマウスの腎組織よりmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ法を用いて経時的遺伝子発現プロファイルの作成を試みた。この経時的遺伝子発現プロファイルより、腎症の発症に伴い発現量の増加・減少をきたす遺伝子群のクラスター分類を検討したところ、ストレス応答性分子シャペロンであるHeat Shock Protein(以下HSP)に属する遺伝子群のうち、HSP40,HSP60,HSP70,HSP86,HSP105が、糖尿病モデル動物の腎臓において経時的にmRNA発現が抑制されていた。現在、HSP過剰発現細胞を作成し、機能解析を行っている。さらに、ヒトでのHSP発現変化と腎症の発症・進展との関連を検討することを目的に、滋賀医科大学旧第三内科にて実施している前向き経過観察研究参加者を対象に、同意の得られた患者からの血清保存ならびにDNA抽出を継続して実施している。今後、血清HSP濃度を測定し腎症との関連性を検討する。また、HSP遺伝子群が腎症感受性候補遺伝子としての役割を演じうるか、HSP遺伝子発現に影響を及ぼすかを検討するため、HSP遺伝子群のプロモーター領域ならびにエクソン領域を直接シークエンス法にて遺伝子多型の同定を行っている。
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