研究概要 |
【高遊離脂肪酸血症によるインスリン抵抗性の分子機構の解明】 脂肪細胞のモデル細胞である3T3-L1細胞において、パルミチン酸孵置(PAL,1mM,24時間)によりインスリン抵抗性(Aktのリン酸化及び糖取り込みの抑制)が惹起された。インスリン受容体及びIRS-1のリン酸化やPI3キナーゼ活性には影響がなかったことより、PALの作用点はAktレベルと考えられた。C2セラマイド(100μM)処置によりPALと同様の結果が得られ、セラマイド合成阻害剤であるミリオシン孵置はPALの効果を消失させた。さらに、セラマイドの合成基質とならないミリスチン酸やオレイン酸はイシスリン抵抗性を惹起しなかった。以上の結果よりFEAを基質として細胞内でde novo合成されるスフィンゴ脂質の一つであるセラマイドがインスリン抵抗性の原因であることが示唆された。 【高遊離脂肪酸血症によるAktリン酸化障害の分子機構】 PALとC2セラマイドはセリンスレオニン脱リン酸化酵素の一つであるprotein phosphatase 2A(PP2A)を活性化すること、PP2A抑制剤であるオカダ酸処置によりPALとC2セラマイドによるインスリン抵抗性惹起作用が消失したこと、PP2AがAktを直接脱リン酸化してその活性を抑制することから、FFA(PAL)は、細胞内セラマイド合成亢進を介して、PP2A活性を直接刺激し、Aktを脱リン酸化することによりインスリン抵抗性を惹起すると考えられた。一方、肝臓のモデル細胞であるFao細胞においてもPALとC2セラマイドはAktリン酸化を抑制したが、PP2A活性化は伴わず、オカダ酸の抑制効果も認めなかった。さらに、ミリスチン酸でもインスリン抵抗性が惹起されたことからFEAによるインスリン抵抗性惹起機序は組織により異なることが示唆され、現在、その機構を解明中である。
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