1型糖尿病の疾患感受性は複数の遺伝因子で規定されるが、中でも主要組織適合抗原(MHC)領域の遺伝因子が感受性に最も強く影響することはヒトとモデル動物NODマウス共通である。NODマウスと同一のクラスII MHCを有するCTSマウスのMHC(H-2)をNODマウスの遺伝背景に導入したコンジェニックマウスNOD.CTS-H2では糖尿病発症率が低下することより、クラスII MHC(Idd1)の外側の領域にIdd1とは別の感受性遺伝子Idd16が存在することを見出してきた。本年度は以下の検討を行った。 1 戻し交配の過程で見出された新しい組換え染色体に由来する2系統のサブコンジェニック(NOD.CTS-H2R1およびNOD.CTS-H2R2)を樹立し、コロニーの維持、ヘテロコンジェニックマウスの交配、ならびに1年にわたる糖尿病発症スクリーニングを進めた。 2 サブコンジェニックNOD.CTS-H2R1に関してはその糖尿病発症率が同腹仔のND0タイプのコントロールマウスよりも有意に低下(P=0.005)していた。 3 しかし、もう1つの系統NOD.CTS-H2R2では同腹仔マウスの比較において、ホモ、ヘテロのコンジェニックおよびND0タイプの(コントロール)マウスの3群間で糖尿病発症に有意差を認めず、膵ラ氏島炎の組織学的評価でも違いを認めなかった。 4 これらの結果より、Idd16の存在領域はクラスII MHCの外側の領域、1.62+0.24cMの領域にまで限局されることを明らかとした。 5 さらに新たなる組み換え染色体を見出し(M203)、MHC領域内およびその周辺の遺伝子マーカーのタイピング結果をもとにIdd16の存在領域をより限局できる可能性を見出した。
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