研究概要 |
糖尿病状態においては、インスリン作用、特に糖輸送のステップが障害されていると考えられている。そこで、本研究ではインスリンが糖輸送を調節する新しいメカニズムについて、細胞膜のマイクロドメインに着目して検討した。その結果、下記の2つが新たに明らかになった。 1.GPIアンカー蛋白が糖輸送担体に直接結合することを発見した。本蛋白は、カベオリンラフトに存在する。この蛋白を脂肪細胞に過剰発現すると、糖輸送は亢進した。その詳細なメカニズムを検討する目的で、糖輸送担体の細胞内局在を詳細に検討した。共焦点顕微鏡と細胞分画法による検討から、糖輸送担体はこのGPIアンカー蛋白に結合しカベオリンラフトに係留されることが判明した。現時点までのところ、カベオリンラフトと糖輸送活性の関係は不明であるが、本研究の結果から、膜上にラフト状の「ホットスポット」が存在し、糖輸送活性に重要であることが解った。上述GPIアンカー蛋白は糖輸送担体をこの「ホットスポット」に局在化させる働きがあると考えられる。現在、論文報告の準備中である。 2.膜直下にインスリンシグナルが効率よく伝達される領域が存在する。そこは、IRS-1蛋白が存在する部位であり、上記「ホットスポット」と同一かあるいは関連して存在すると考えられる。しかし、長い間IRS-1の局在は不明であった。今回我々は、IRS-1の可視化を試み、成功した。IRS-1は、インスリン刺激により細胞膜と膜直下の微細穎粒状構造体に集った。興味あることにこの微細構造体は、TNFαによるインスリン抵抗性、IRS-1のダウンレギュレーションに関係していることが判明し、論文報告した(J.Cell Biol.173:665-671,2006)。
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