本計画の目的は、2型糖尿病感受性を高めるレジスチンSNP-420にGを有するプロモーターにおいて、特異的な転写活性化因子を同定し、新たなインスリン抵抗性改善薬の標的を見出すことである。 2型糖尿病感受性レジスチンプロモーター活性化DNAエレメント及び結合転写因子の同定を目指して、主としてレジスチンプロモーター活性及びmRNAについての各分子の効果を検討した。 種々の長さのレジスチンの5' flanking領域について、SNP-420がCとGを有する2種ずつのレポーターを作成した。これらをヒト単球培養細胞のTHP-1に導入し、レジスチンの5' flanking領域がプロモーター活性を有することを確認した。一方、インスリンやLPSなどの分子が内因性レジスチンmRNAに及ぼす効果をRT-PCRで検討した。その結果、レジスチンmRNAを増減させる分子を複数見出し、いずれも用量依存性、時間依存性を確認した。一方、-450bまでを含むレポーターを用いて、上記の分子のプロモーター活性への効果を検討したが、明らかな影響を認めなかった。ELISAにより、培養上清へのレジスチン分泌をヒト単球においては検出したが、培養細胞では困難であった。培養細胞でのWesternでもレジスチン蛋白は検出できなかった。以上より、レジスチンの発現は、mRNAにより最も感度よく解析可能であった。 一方、健常人より単離した単球のレジスチンmRNAは、採血時の血中レジスチン濃度と正に相関し、SNP-420遺伝子型がG/G>C/G>C/Cの順に高かつた。また、2型糖尿病患者において、糖尿病合併症が進行すると血中レジスチン膿度が高くなることを見出した。このことは、レジスチン発現抑制薬が、2型糖尿病発症のみならず合併症進展の抑制をもたらす可能性を示唆する。今後更にレジスチンの転写調節機構の解析を続ける必要があると考えられる。
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