研究課題/領域番号 |
17590946
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
小山 英則 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (80301852)
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研究分担者 |
山本 博 金沢大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00115198)
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キーワード | 糖化蛋白受容体 / 可溶型糖化蛋白受容体(esRAGE) / 血管新生 / 糖尿病 / 大血管症 / マウス / 病態生理 |
研究概要 |
【目的】糖尿病で血管新生反応が低下していることが知られているが、その機序は明らかではない。今回、終末糖化蛋白(AGE)受容体(RAGE)欠失マウスを用いて、糖尿病性血管新生障害の病態と機序におけるRAGEの意義を検討した。 【方法】streptozotocinまたは溶解液を腹腔内投与しインスリン欠乏型糖尿病または対照マウスを作製した。血管新生反応は、Matrigel plug法により定量評価した。細胞増殖及び細胞死はPCNA免疫染色及びTUNEL法により解析した。遺伝子発現はReal time-RT-PCR法により定量評価した。可溶型RAGE (esRAGE)はアデノウイルスベクターを用いて強制発現させた。 【結果】RAGE+/+糖尿病マウスにおいて、Matrigel中のCD31陽性内皮細胞およびαSM actin陽性平滑筋または周細胞が対照RAGE+/+マウスに比べて有意に低下していた。この糖尿病性の変化はRAGE-/-マウスにおいては認められなかった。摘出したMatrigel内の細胞の遺伝子発現解析によると、血管新生促進因子のVEGFの発現は糖尿病マウスで対照マウスに比べて有意に減少し、反対に血管新生抑制蛋白であるthrombospondin-l mRNAは有意に増加していた。しかしながら、このような遺伝子発現の変化はRAGE+/+及びRAGE-/-いずれのマウスにおいても観察された。RAGE+/+マウスにおいては、Matrigel中の細胞増殖を示すPCNA陽性細胞が糖尿病において対照マウスに比べて有意に減少し、細胞死のマーカーであるTUNEL陽性細胞は有意に増加していた。この糖尿病における細胞増殖・細胞死の変化はRAGE-/-マウスにおいては認められず、RAGE依存性と考えられた。最後に、RAGEのspliced variantでデコイ受容体であるesRAGEをアデノウイルスで強制発現させると、糖尿病マウスにおける血管新生抑制が有意に改善した。 【結論】糖尿病性血管新生障害にRAGEが関与すること、その機序の一端にRAGE依存性の血管細胞増殖・細胞死の調節が関与することが明らかになった。また、esRAGEによるRAGEの競合的阻害により、糖尿病性血管新生障害が制御できる可能性が示された。
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