研究概要 |
終末糖化蛋白(AGEs)受容体(RAGE)は、糖尿病で蓄積するAGEsの作用を伝達する免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜1回貫通型受容体であり、糖尿病合併症の病因に深く関与する。一方S100、HMGB1など炎症と関連蛋白の受容体でもある。我々は種々の病態モデルを用いてRAGEと動脈硬化の関連を検討してきた。1.ApoE・RAGEダブルノックアウトマウスを用いた解析によると、動脈硬化誘発食負荷群20週齢において、ApoE-/-RAGE-/-マウスはApoE-/-RAGE+/+に比べて胸腹部大動脈プラーク面積は有意に低下していた。体重、精巣上体周囲脂肪重量、脂肪細胞サイズも、ApoE-/-RAGE-/-マウスで低下し、大動脈プラーク面積は脂肪重量,脂肪細胞サイズと有意な正の、血清アディポネクチン濃度と有意な負の相関を認めた。2.マウス中大脳動脈閉塞モデルにおいてRAGE-/-はRAGE+/+マウスに比べて有意に脳梗塞面積が低下していた。RAGE-/-マウスでは局所の炎症性因子のIL-1β、TNF-α、iNOS、COX2、HMGB1の発現が有意に低下しており、RAGEが炎症機転の調節を介して局所の虚血反応を制御することが想定される。3.糖尿病マウスにおいては末梢組織の血管新生反応が低下しており、この障害がRAGE欠失またはデコイ型分泌性RAGE(esRAGE)の過剰発現により回復する。また糖尿病マウスにおいては骨髄細胞の血管新生誘導作用も障害されており、この作用もRAGE依存性であった。以上のように、RAGEは肥満・代謝異常、炎症反応、血管新生反応など多岐にわたる病態に深く関与し、動脈硬化の病因における中心的な役割を担う。またRAGEは糖尿病、肥満、動脈硬化、心血管疾患に対する標的因子として、今後の臨床応用が期待される。
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