研究課題
基盤研究(C)
終末糖化産物(AGE)受容体(receptor for AGEs: RAGE)は、糖尿病性血管合併症の病因に深く関与する。RAGEは免疫グロブリンスーパーファミリーに属する膜1回貫通型受容体で、AGEsの結合によりNF-kBなどの細胞内情報伝達系が活性化される。近年開発されたRAGE過剰発現マウスおよびRAGE欠失マウスを用いた解析により、RAGEは糖尿病性腎症の発症進展に重要な役割を果たすことが示されている。糖尿病においては、動脈硬化進展および大血管症の重症化に対する防御機転と考えられる側副血管形成障害も認められ、これらの病態にRAGEが深く関与する。RAGEの一部に分泌され血中を循環するタイプ(endogenous secretory RAGE:esRAGE)が存在することが明らかになり、decoy受容体としてRAGEを競合的に阻害すると考えられる。esRAGEは健常者の血中に0.1-0.5ng/ml程度の濃度で存在し、糖尿病、高血圧で減少する。また血中esRAGEは肥満、高中性脂肪血症、インスリン抵抗性などメタボリックシンドローム関連因子と負の相関を示す。一方腎不全患者コホートを用いた追跡調査によると、esRAGE血中濃度が低値の群では糖尿病の有無にかかわらず有意に心血管系死亡が多い。また動物実験においては、esRAGEの過剰発現により糖尿病性血管障害が有意に抑制される。このように、esRAGEはRAGE情報伝達系を阻害することにより、動脈硬化性疾患の発症を制御できる可能性を有している。今後esRAGEの調節機構を解明するとともに、RAGE-esRAGE標的とした食薬開発など、大血管症への標的治療として臨床展開が期待される。
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