代謝症候群(メタボリック・シンドローム)は、内臓肥満とそれに伴うインスリン抵抗性を基礎に、高血圧症、糖代謝異常、脂質代謝異常を来たし、虚血性心疾患を代表とする動脈硬化性疾患を合併する病態である。代謝症候群は、その発症に複数の原因が関与する多因子病であると考えられる。その中の一つとして、私どもは低比重リポ蛋白受容体関連蛋白5(Low density lipoprotein receptor related protein 5:略号LRP5)に注目している。LRP5は、脂質代謝に重要な低比重リポ蛋白(LDL)受容体と構造が類似し、糖代謝・骨代謝などの経路にも関与する多機能受容体であることが明らかになっている。LRP5遺伝子は23個のエクソンから構成され、1615個のアミノ酸をコードする。「ヒトの代謝症候群の発症にLRP5の遺伝的・機能的異常が関係している」という仮説を検証することを目的として、(1)代謝症候群患者からLRP5の遺伝子変異を持つ患者を発見するために、代謝症候群患者のLRP5の遺伝子解析を進めている。代謝症侯群患者からインフォームドコンセントを得た後採血し、末梢血からゲノムDNAを調製し、LRP5の塩基配列決定を行っている。(2)私たちが確立したヒトLRP5遺伝子の7箇所の一塩基多型(SNPs)を簡便に判定するPCR-RFLP系で、代謝症候群と対照におけるヒトLRP5のSNPs頻度を比較している。現在、(1)(2)のデータの集積を行っている。
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