研究代表者らはこれまでに、CNP-GC-Bシステムの強力な内軟骨性骨化促進作用と、軟骨無形成症モデルマウスにおけるCNPによる劇的な治療効果を証明した(Nat.Med 2004)。更にCNPは、FGFシステムのMAPKシグナル伝達系を介した基質産生抑制を回復することにより、骨伸長障害を改善することを証明してきた。当該研究において、CNP-GC-BシステムとFGFシステムの細胞内シグナル伝達系の相互作用を検討し、CNP-GC-Bシステムの内軟骨性骨化促進作用の分子メカニズムの更なる解析をおこなった。まず、ex vivo成長板軟骨組織培養系におけるMAPK系以外のFGFシステムのシグナル伝達系の有無を検討したところ、FGF2の添加により著明なSTAT1の、また中等度のAktのリン酸化を認めたが、PLC-γおよびp38のリン酸化はほとんど認めなかった。次にFGF2添加によるSTAT1およびAktのリン酸化に対するCNPの効果を検討したところ、前者にはほとんど影響を与えなかったが、後者ではその作用を著明に抑制した。さらに、ヘパリン添加によってFGF2に対するAktのリン酸化は著明に抑制された。以上より、FGFシステムは成長板軟骨において(1)MAPK系およびSTAT1系を介して作用するが、CNPはSTAT1系には影響を及ぼさないこと、(2)PI3キナーゼ/PKBを介するシグナル伝達系があり、CNPはそれを抑制するが、生体環境に近いと考えられるヘパリン存在下ではPI3キナーゼ/PKB系そのものが抑制されていること、が証明された。逆に、FGF2添加によるFGFシステムの賦活化は、CNP-GC-Bシステムのセカンドメッセンジャーである細胞内cGMP産生を濃度依存的に抑制した。以上より、成長板軟骨におけるCNP-GC-BシステムとFGFシステムの細胞内シグナル伝達系の相互作用が明らかとなった。
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