研究課題
基盤研究(C)
アンジオテンシン・バソプレシンデュアル受容体(AT/VPR)はアンジオテンシンII(AII)とバソレシン(VP)の両ペプチドをリガソドとするユニークな受容体としてラットよりクローニングさた。しかしその遺伝子構造や機能に関しては、未だ詳細は不明のままである。今回我々はマウスにおける同受容体遺伝子をクローニングし、その遺伝子構造ならびに発現臓器に関する検討を行った。その結果、ラットゲノムDNAより全長約6.5Kbの遺伝子を見出した。予想外にも、ラットにおける翻訳開始部位のメチオニンはマウスではロイシンに置換しており、実際の翻訳開始点はアミノ酸192個上流に存在し、結果的にmouse ATAVPRはratのそれと比較して179個長いアミノ酸を有していた。またcDNAとの比較検討により、ATAVPR遺伝子は少なくとも5個のエクソンから成ることが明らかとなった。また興味深いことに、遺伝子の一部はPathogen-recognition receptor蛋白であるNACTH/Nalp6遺伝子とcoding regionを共有していた。本遺伝子のmRNAは下垂体、視床、大脳皮質、海馬、小脳、肝臓、胆嚢、腎臓、副腎、大腸、精巣、白色脂肪細胞など、諸臓器に広汎に発現していた。一方、心臓での発現は弱く、骨格筋、皮膚、脾臓では発現を認めなかった。この受容体のcDNAを発現ベクターに組み込んで血管平滑筋細胞に発現させたところ、AIIに対する反応は認めなかったが、VPに対しては細胞内カルシウム反応性およびcAMP/PKA応答性レポーターの反心を増強させる一方、炎症関連レポーターの反応を強力に抑制した。以上の結果より、1)マウスT/VPR遺伝子は他の受容体蛋白遺伝子とゲノムを共有するユニークな遺伝子であること、2)VPに対する細胞内シグナル伝達系の反応を修飾する作用を有することが明らかとなった。本受容体の広汎な発現分布を考慮すると、AT/VPRは内分泌系としてのホルモンに対する特異的な受容体というよりは、リガンドに対する細胞の反応性のモディファイヤーとして機能している可能性が推察される。
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日本内分泌学会雑誌 第80回日本内分泌学会学術総会抄録集 Vol.83, No.1(In press)
80^<th> Japanese Endocrine Society Vol. 83, No. 1 (in press)