研究概要 |
血小板機能制御の分子レベルの理解が深まることは,新規抗血小板薬の開発にも大変有用であろう.最近、質量分析などの手法が一般化したこともあって、次々に,これまで血小板で報告されてこなかった分子が次々に同定されている.これらの分子は単に基礎的に興味深いばかりではなく,将来の抗血小板薬のターゲット候補となりうる.17年度においては,血小板の形態変化や伸展に深く関与するアクチン重合に関連するWAVEタンパクのアイソフォームの全て(WAVE1-3)が存在し,さらにこのWAVEと結合するSra-1,Nap-1などが血小板にあることを初めて報告したが(Blood,2005),Sra-1,Nap-1に対する特異抗体を作製し,また,主として培養細胞を用いてIRSp53とWAVEさらにSra-1,Nap-1の関連性に関して検討を加えた(J Cell Biol,印刷中2006).この報告で,IRSp53が改めて低分子量Gタンパクracの下流でWAVEの機能に重要な役割を果たしていることを確認し,さらに知見を重ねた.血小板にもIRSp53が存在することは確認しており,血小板アクチン重合にもracの下流でIRSp53・WAVE系が重要な役割を果たしていることもありえよう.さらに,血小板にも存在するが全く報告の無いチロシンリン酸化酵素Argの様々な変異ミュータントを培養細胞などで発現させ,アクチン細胞骨格改変に重要なドメインなどを決定した.以上のように,血小板で新規にタンパクを次々に同定し,かつ必要に応じて特異抗体を作製,また核の無い血小板では容易に出来ない実験に関しては細胞株を用いてその分子の生理的意義を検討した.
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