研究概要 |
(研究目的)ヒト造血幹細胞(CD34+細胞)の赤芽球系特異的分化誘導においてtumor necrosis factor-α(TNF-α)が存在すると、樹状細胞(dendritic cells, DCs)が同時に発生して、自己赤芽球系前駆細胞を貪食する。TNF-αは炎症急性期の最も早期に発現するサイトカインである。(研究方法)造血刺激と炎症反応の共存は、DCsによる自己造血前駆細胞の貪食を誘導する普遍的現象であると仮定した。浮遊培養系を用いて、純化ヒトCD34+細胞をthrombopoietin(TPO)存在下で巨核球系前駆細胞へ誘導し、その過程で、TNF-αの影響を検討した。(研究成果)TPO単独ではほぼ単一の巨核球系細胞が誘導された。TNF-αは巨核球系細胞の産生を抑制し、同時にDCsからなる非巨核球系細胞の増加を認めた。DCsによる自己巨核球系細胞の接着と貪食を認め、DCsによる自己Tリンパ球の増殖誘導を確認した。DCsのサイトカイン産生は微弱であり、基本的に免疫寛容の誘導に働いていることが示唆された。臨床的には、血球貪食症候群において、CD11c+細胞による自己血球の貪食を確認した。以上から、造血刺激と炎症反応の共存は、DCsによる自己造血前駆細胞の貪食を誘導する普遍的現象であることを世界で初めて明らかにした(Blood 107:1366-1374,2006)。本報告は、Inside Blood:"The story of hungry macrophages(Dessypris EN.Blood 107:1250-1251,2006)"において「血球貪食症候群におけるDCsの関与を明らかにしたことは、血球貪食症候群などの感染後の血球減少の病態を解明する上で非常に重要な発見・成果である」として高く評価を受けた。現在、さらに検討を進めている。
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