研究概要 |
我々はこれまでにMgcRacGAPが細胞質分裂において必須な役割を担うことを明らかにしてきた(Hirose et al., J.Biol.Chem.,2001 ; Minoshima et al., Dev. Cell, 2003)。また、2005年には染色体分配においてもMgcRacGAPが機能を有するという報告がなされた。我々は酵母を利用したツーハイブリッド法によりMgcRacGAP結合蛋白質としてKLIP1という分子を単離した。局在を検討した結果、KLIP1はヒト子宮頸がん細胞株であるHeLa細胞およびニワトリB細胞株であるDT40細胞において、細胞周期を通じてCENP-AやCENP-Hと共局在を示すキネトコア(動原体)蛋白質であることが判明した(Minoshima et al., Mol Cell Biol, 2005)。そこで我々はKLIP1をCENP-50と命名した。CENP-50/KLIP1の機能解析のためDT40細胞において遺伝子破壊細胞を樹立した。このCENP-50遺伝子破壊細胞は致死ではないものの、野生型に比べ増殖速度の低下が認められた。この増殖速度の低下が細胞分裂の遅延によることも明らかとなった。共免疫沈降の実験からCENP-50は恒常的動原体局在分子であるCENP-H/CENP-Iと複合体を形成していることが明らかとなった。また、CENP-HおよびCENP-Iを欠損した細胞においてはCENP-50の動原体への局在が消失していた。さらに、CENP-50遺伝子破壊細胞は細胞分裂期に微小管重合阻害剤でスピンドルチェックポイントを活性化させると、阻害剤を除去しても正常に分裂を終了できないことが明らかとなった。その際、姉妹染色分体が分離していたことから、CENP-50はスピンドルチェックポイントが活性化している際の姉妹染色分体の接着に役割を持つことが示唆された。
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