胚中心細胞由来の細胞株DaudiおよびRajiにexogenousにIRF4を発現させ、その影響を調べた。Doxycyclin添加によりIRF4を誘導的に発現する細胞株Daudi-IRF4、および4-Hydroxytamoxifen添加によりIRF4が核内に移行し活性化する細胞株Raji-IRF4を樹立した。これらの細胞においてIRF4を発現・活性化させると、いずれの細胞においても増殖の遅延、G1期の増加とS期の減少が見られた。すなわちIRF4はG1期からS期への移行を阻害することにより、細胞周期の進行を遅らせ、増殖を抑制しているものと考えられた。 さらに形質細胞マーカーであるCD38/CD138の発現増加、胚中心細胞マーカーであるBCL6タンパクの発現低下が見られ、IRF4は形質細胞分化を誘導することが示唆された。形質細胞分化を司る転写因子群の発現を検討したところ、胚中心細胞において発現しているBCL6、PAX5のmRNAの発現低下、および形質細胞において発現しているBLIMP1、XBP1の発現増加が観察された。これらの結果により、IRF4は胚中心細胞から形質細胞への分化を誘導することが示唆された。 さらにDaudi-IRF4にBCL6を強発現させた細胞株Daudi-IRF4-BCL6を用いて同様の実験を行うと、IRF4による増殖の遅延と形質細胞への分化は阻止されなかった。 以上から、IRF4の増殖遅延作用、形質細胞分化誘導作用は分化の負のレギュレーターであるBCL6の作用に非依存性のものであることが判明した。
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