研究概要 |
血小板機能の発現には、各種の膜表面受容体(ADP受容体、コラゲン受容体、トロンボキサン受容体など)と、受容体以降の刺激伝達機構の関与が極めて重要な役割を占める。申請者らは血小板機能異常症のうち、このどちらかの障害に起因するものを、血小板刺激伝達異常症とする概念を提唱し、すでに前者の異常として、トロンボキサン受容体の異常によるシグナル伝達異常症(トロンボキサン不応症)を明らかにしている(Blood 81:994,1993,J Clin Invest 94:1662,1994,Thromb Haemost 76:1080,1996,Thromb Haemost 82:1528,1999)。 後者に属する血小板シグナル伝達異常症について、我々は既にADP受容体P2X1からのCa動員やphospholipase C(PLC)活性化経路の異常症(British J Haematol 115:485,2001)を報告しているが、その他にも多くの病型があり、未だにその病因が不明なものが多い。今回、我々はコラゲン凝集のみが欠損している血小板シグナル伝達異常症に注目し、その病因解析を行った。すなわち本症血小板を用いて、コラゲンや他のアゴニスト(トロンビン、ADPなど)刺激時のPLC活性化、細胞内Ca動員、glycoprotein IIb/IIIa活性化の検討を行うと、本症血小板ではコラゲン刺激時にのみこれらの反応が認められず、他のアゴニスト刺激時ではすべて正常であった。このことは本症血小板ではPLC活性化-細胞内Ca動員-glycoprotein IIb/IIIa活性化の経路そのものには異常なく、その障害部位はコラゲン受容体からPLC活性化へ至る経路であることが明らかとなった。
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