生薬コウジョウコンやブドウの皮に含まれるレスベラトロールは、抗菌、抗酸化活性を持つポリフェノールであり、また疫学的研究から循環器疾患予防効果がある事が知られている。我々はこの物質の糖尿病惹起物質レジスチン遺伝子並びに血栓危険因子PAI-1発現に対する影響を、3T3-L1前駆脂肪細胞を用いて検討した。今年度は、Ob/Ob肥満マウスを入手するのが遅くなり現在解析中であるので、3T3-L1細胞を用いた解析結果について報告する。 1.インスリン抵抗性惹起因子レジスチン遺伝子発現抑制の解析 レスベラトロール処理によって脂肪細胞分化が抑制されるに伴い、脂肪細胞分化に必要な転写因子PPARγ、C/EBPαが減少し、また培養上清中に分泌されるレジスチンも減少した。次にレスベラトロール添加後24時間におけるレジスチンmRNA発現量を検討したところ、濃度依存的にこの遺伝子発現を抑制した。レスベラトロール同様抗酸化活性があり、また抗肥満作用もある緑茶の成分エピガロカテキンガーレートを同じ濃度レンジで作用させたが、レジスチンmRNAレベルに影響を与えなかった。次に経時変化を検討したところ、脂肪細胞分化に伴い上昇してくるレジスチンmRNA発現量を有意に抑制した。さらに、レジスチン遺伝子転写活性をルシファラーゼレポーターアッセイによって検討したところ、レスベラトロールの濃度依存的に転写活性を抑制した。以上のことから、ワインに多く含まれるレスベラトロールの摂取によって、脂肪細胞で発現しているアディポカイン・レジスチン遺伝子発現抑制の可能性が示唆された。 2.血栓危険因子PAI-1遺伝子発現抑制機構の解析 血栓危険因子PAI-1遺伝子の場合、レスベラトロール処理により、発現パターンの二相性が見られた。すなわち、レスベラトロール30μM添加後24時間で2倍程PAI-1 mRNA量が増加したのに対し、添加48時間後では、高濃度処理(100μM)で反対にPAI-1 mRNA量が減少した。これらの二相性の原因について、さらなる分子機構の検討を重ねている。
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