研究課題
基盤研究(C)
野生型並びに変異FLT3遺伝子導入をした32D細胞、FLT3/ITD変異を持つヒト白血病細胞株(MOLM13,NAMO-2など)を用いて1)FLT3遺伝子異常とインテグリン機能の関連、2)インテグリン活性化に関与するシグナル伝達系の解明につき基盤的研究を行い下記の結果を得た。1.FLT3の恒常的活性化により白血病細胞のフィブロネクチン(FN)への接着が亢進していることが判明した。2.マウス骨髄由来ストローマ細胞HESS-5との接着によってのみ生存、増殖することができるヒト白血病細胞株NAMO-2はFLT3/ITD変異を有している.HESS-5上に接着したNAMO-2細胞にFLT3阻害剤を加えることにより接着が阻害されることが明らかになった。3.我々はVCAM1-Fcキメラ蛋白を使用したFACSによるα4β1インテグリン活性測定系を確立した。FLT3/ITD発現32D細胞にFLT3阻害剤を加えることによりα4β1インテグリン活性が低下することが証明された。一方で野生型FLT3発現32D細胞にFLT3 ligandを添加したところα4β1インテグリン活性上昇が証明された。以上のことから変異FLT3シグナルはα4β1インテグリンの活性(inside-out signaling)を亢進させることが強く示唆された。4.我々はNIH3T3細胞においてインテグリン活性化にPI3Kが必要であることを証明した。また活性化インテグリンは新たな細胞外マトリックスへの結合を介してSAPK/JNKのリン酸化を誘導することが明らかになった。以上の研究により恒常的活性化FLT3がインテグリン活性化を介して白血病細胞のFNやストローマ細胞上への接着を制御していることが証明された。FLT3/ITD変異を有する白血病の予後に骨髄ニッチへの接着による白血病細胞の残存が関与している可能性がある。
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