研究概要 |
1.TFLと細胞周期:ヒトのTFLとGFPの融合遺伝子を発現するベクターを構築し、TFLを発現していないマウスpro-B細胞株BaF3に遺伝子導入した。するとTFLを導入した細胞はGFPの発現が減少した。これらの細胞でチミジンの取り込みを調べたところ、TFL遺伝子導入群で有意に取り込み低下が認められた。またBrdUの解析において、細胞同調後のアッセイではTFL導入群においてG0/G1期の細胞を多く認め、S期の細胞は有意に減少していた。これらの結果から、TFLはリンパ球のG1期からS期への移行を抑制し、細胞をG1期に留めておくことが明らかになった。 2.TFLの細胞内局在:TFL/GFP融合ベクターをNIH3T3細胞に導入し、発現の局在化の有無を共焦点蛍光顕微鏡にて観察したところ、明らかにTFLは核に集積していた。またHoechest33342によるDNAとの二重染色において、DNAの集積が疎な部分に核内の局在が偏っていることも示した。 3.siRNAによるTFLのノックダウン:ヒト、マウスのTFLに対して、ノックダウン効率の良いsiRNAをリアルタイムPCRで確認し、最も優れたsiRNAにAlexa488の蛍光標識を行い追跡できるようにした。このTFL siRNAをマウスの脾臓細胞に導入しCD3,CD28でT細胞を刺激したところ、細胞の増殖を抑制できることを確認した。 4.TFL変異体の機能:TFLはC末端領域にzinc finger motif(Zn)を有している。そこでZnを欠失させたTFL(TFLZn-)/GFPベクターを構築し、上述の実験を行った。するとTFLZn-を導入したBaF3細胞では増殖の抑制が解除され、コントロールとほぼ同様の細胞増殖を示した。さらに核内に局在化していたTFLは、その局在化は見られなくなった。つまりZnはTFL機能発現において必須のmotifであり、Znを介してターゲットの核酸に結合することでその機能を発揮することが示唆された。 5.TFLノックアウトマウスの作成:ターゲッテイングベクターの作成からES細胞のスクリーニングを終了し、インジェクションの結果キメラマウスが得られた。現在F1マウスの交配を作成しており、個体レベルでのTFLの解析を行う方針である。
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