研究概要 |
血液凝固制御因子の一つであるプロテインCはセリンプロテアーゼ前駆体として循環しているが、この状態では生理活性を発揮できない。血管内皮上において活性型のプロテアーゼに変換されてはじめて機能を発現するようになる。この活性化反応は、血液凝固カスケードの動作によって生成されたトロンビンと血管内皮上に発現している受容体分子トロンボモジュリンとで形成される複合体によって触媒される。この活性化反応を著しく促進する血管内皮上の分子が血管内皮プロテインCレセプター(endothelial cell protein C receptor ; EPCR)である。この分子は前駆体であるプロテインCだけではなく、活性化プロテインC(APC)とも同様の高親和性で結合する。EPCRに結合したAPCは新たな基質としてトロンビンレセプターの特異的切断を行う。この切断により、細胞内にシグナルが誘導される。APCに関しては様々な抗炎症作用が報告されているが、これらの多くがEPCRを介したシグナル伝達の結果であることが見出されている。我々は、APCが血管内皮においてプロスタサイクリンの産生を誘導するCox-2の発現を誘導することを見出した。APCとEPCRの結合を阻止するモノクローナル抗体の存在下ではCox-2の誘導は抑制されるので、この現象にはEPCRの機能が重要である(Brueckmann M., et al.,2005,Thromb Haemost.)。一般的にCox-2の発現にはNF-κBの活性化が必要であるとされている。しかし、NF-κBの活性化には様々な様式があり(例えばearlyとlate)、動員される転写因子の種類も異なる。我々は、最近、異なる経路によりNF-κBを活性化するモノクローナル抗体を作成することに成功したので、今後詳細を検討する。
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