研究概要 |
我々が、世界に初めて報告した血小板増多因子トロンボポエチンの受容体c-mpl遺伝子変異による家族性血小板増多症につき、膜貫通領域にある本変異Asn505がいかにシグナル活性化をおこし、疾患発症に関わったのかについて、本研究で検討した。結果、以下の点を明らかにした。本変異Asn505は、リガンド非依存性に(C-mplの二量体形成を誘導し、下流のシグナルSTAT5,ERK1/2をリン酸化(活性化)させ、細胞増殖を誘導すること。C-mpl二量体形成に細胞外ドメインに存在するジスルフィド結合の関与があるかについて、細胞外ドメインの欠失体でも、二量体は形成されシグナルは活性化されること。自律性二量体形成能に関わる分子間力を検討するため、Asn505部位の様々な変異体を形成し、二量体形成、シグナル活性化につき検討したところ、アミノ酸として強い極性を有する残基(Asp, Gln, Glu等)にのみ自律性活性化能があることから、水素結合が本シグナル活性化の必須である二量体形成のための分子間力であること。弧発性血小板増多症20例の解析でc-mpl変異の有無を検討した結果、変異はなく弧発性血小板増多症にはc-mpl遺伝子変異は関係していないこと。以上の実験結果を得たが、これにより、受容体の膜貫通領域にある遺伝子変異によりシグナル活性化が起きるメカニズムとして、これまで報告されていたジスルフイド結合の形成の他に、水素結合を分子間力として二量体形成がおき、活性化反応が引き起こされる機序を同定するに至った。
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