研究概要 |
本年度は、白血病細胞におけるHIF-1αの安定化機構および、flavonoid類がHIF-1の発現レベルに及ぼす影響について研究を進め、以下の事項を明らかにした。 1.血病糸胞におけるHIF-1αの-現には糖代謝の活性化が必要である。 昨年度の研究により、ヒト白血病細胞株におけるHIF-1αの安定化にはミトコンドリア由来の活性酸素(ROS)が重要であることを明にしたが、さらにミトコンドリアからのROS産生メカニズムについて探求した。特に、ミトコンドリアでのROS産生は糖代謝およびそれと連動する酸化的リン酸化と密接に関わるため、まず糖代謝の阻害剤である2-deoxyglucoseを用い、HIF-1αの発現が変化するかを調べた。その結果、2-deocyglucoseによりHIF-1αの発現は著明に抑制されることが分かった。さらに、glucose transporter蛋白の機能を抑制した場合にも、HIF-1αの発現は抑制された。培養液中のグルコース濃度を低下させることによっても、HIF-1αレベルは低下した。以上の結果より、白血病細胞におけるHIF-1αの発現上昇には、糖代謝の活性化が必要であると考えられた。 2.flavonoidによるHIF-1αの発現レベル制御 昨年度の研究において、flavonoidの一つであるresveratrolがHIF-1αの発現を抑制することを明らかにした。本年度は、さらに多数のflavonoidを用い、HIF-1αへの影響を検討した。その結果、Luteolin, Quercetin、MyricetinおよびEpigallocatechinによりHIF-1αの発現が誘導された。一方、Apigenin, Kaempferol, Naringeninなどはその発現を抑制した。現在、flavonoidのうちHIF-1αの発現レベル調節に必要な構造を解析中である。
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