研究課題/領域番号 |
17591006
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
窓岩 清治 自治医科大学, 医学部, 講師 (70296119)
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研究分担者 |
小林 英司 自治医科大学, 医学部, 教授 (00245044)
坂田 洋一 自治医科大学, 医学部, 教授 (40129028)
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キーワード | 血友病A / 抗第VIII因子インヒビター / 免疫寛容 / 第VIII因子欠損マウス / 胸腺組織 / 樹状細胞 |
研究概要 |
血友病第VIII因子インヒビターの産生制御を目的とし、第VIII因子欠損マウスを用いて、胸腺組織の抗原提示細胞を修飾することにより、成体マウスにおいて第VIII因子特異的な免疫寛容が成立する可能性について以下の研究を進めた。1)第VIII因子欠損マウスの胸腺への直接的第VIII因子の投与方法についての検討:抗マウスリンパ球ウサギ血清の前投与により、予め既存の第VIII因子応答性末梢性T細胞を除去した第VIII因子欠損成体マウスに対して、胸腺組織を露出させ直視下で胸腺組織内へ確実に抗原(ヒト精製第VIII因子抗原)を注入する方法を検討した。その結果、ヒト第VIII因子を50μL/回(0.05単位/kg体重)投与したマウスは、全例生存したのに対し、投与量を100μL/回(0.05単位/kg体重)に増量させると90%以上のマウスが3日以内に出血死したことから、胸腺組織への至適投与容量を50μL/回と設定した。さらに安全かつ低侵襲である超高解像度エコーガイド下での経皮的胸腺注入の方法も確立した。2)ヒト第VIII因子胸腺内投与による免疫寛容誘導の検討:第VIII因子欠損マウスの胸腺組織にヒト第VIII因子精製抗原を注入後、経静脈的に同抗原を反復投与し、成体マウスにおける免疫寛容誘導の有無を検討した。生体マウスに対して、ヒト第VIII因子精製抗原の胸腺内投与により、全例で反復投与3回目と早期に抗第VIII因子抗体が出現し、そのうち67%が高力価(>100BU/mL)のインヒビターを有していた。一方、生後2日齢における胸線内投与群では、全例において反復投与5回目でも低力価であった。3)新生仔寛容マウス由来脾細胞の胸腺移植による免疫寛容誘導の検討:0日齢の新生仔にヒト第VIII因子を投与することにより作成した第VIII因子欠損免疫寛容マウス由来脾細胞を、第VIII因子欠損生体マウスの胸腺へ移植した。その結果、レシピエントマウスの約60%で抗第VIII因子抗体が出現せず、抗体が出現した個体でもその力価は最高23.4BU/mLと低値であった。以上より、第VIII因子欠損マウスをモデルとし、胸腺組織の抗原提示細胞を制御することにより特異的免疫寛容を誘導し得る可能性が示された。
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