我々は血清中にnm23-H1蛋白が検出されることを見出し、短時間で定量的に測定できるELISAの系を作成した。それにより、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫)で血清nm23-H1高値の症例で予後不良となることを報告し、新しい優れた予後不良因子となることを明らかにした。今年度は、リンパ腫におけるnm23-H1の意義を基礎的に検討するとともに、多くの臨床検体による意義を継続的に検討した。ホジキンリンパ腫に対して、血清および細胞質内nm23を検討し、リードスタンバーグ細胞およびホジキン細胞でnm23-H1が高率に陽性になることを見いだし、血清nm23-H1レベルとの比較を行なった。その結果、血清および細胞質内nm23-H1が非ホジキンリンパ腫同様ホジキンリンパ腫の独立した予後因子であることを見いだした。また、nm23-H1が分子標的治療薬であるリツキシマブを使用したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫における治療研究に対して、予後因子となるかどうか検証した。その結果、リツキシマブ併用化学療法を行なってもnm23-H1が独立した予後因子になることを見いだした。その後、甲状腺、胃、腸管などの節外臓器から発生するリンパ腫でも同じように予後因子となるかどうかの検討を行い、甲状腺原発リンパ腫および乳腺原発リンパ腫においてnm23-H1高発現症例で有意に予後不良であることを見いだした。
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