研究概要 |
白血病に対する新たな分子標的治療薬の開発を目的に、天然物由来生理活性物質を用いて検討した。緑茶成分カテキン誘導体epigallocatechin gallate (EGCG)は濃度および時間依存性に種々の骨髄性白血病細胞のアポトーシスを誘導した。EGCGはミトコンドリア膜電位を低下させ、チトクロームCをミトコンドリアより放出し、caspase-3,-9を活性化した。また、同時にBaxを誘導し、Mcl-1の発現を低下することで白血病細胞のアポトーシスを誘導した。EGCGは活性酸素(ROS)を極めて短時間で産生した。抗酸化剤catalase,NACの前処置にてEGCGによるミトコンドリア膜電位の低下や、それに引き続き誘導されるアポトーシスは完全に阻害されることより、EGCGによる骨髄性白血病細胞のアポトーシス誘導は、ROSの産生により惹起されるものと考えられた。次に、EGCGの臨床応用を目的に免疫不全マウスNOD/SCIDマウスに白血病細胞を移植するモデルを用いてin vivoにおける効果を検討した。その結果、生食のみを投与したコントロール群に比較し、EGCG投与群では有意に腫瘍重量が縮小した。以上、よりEGCGはROSを産生し、骨髄性白血病細胞のアポトーシスを誘導することが明らかになったが、引き続き次年度はROSにより、活性化される転写因子HIF-1およびその下流分について検討していく予定である。 同様に、東南アジアに自生する植物由来の1'-acetoxychavicol acetate (ACA)も白血病細胞のアポトーシスを誘導し、その増殖を抑制した。ACAは興味深いことにミトコンドリアおよびdeath receptor, Fas,の両者の経路を用いて白血病細胞のアポトーシスを誘導したが、まずROSを産生することにより2つの経路が活性化されることが明らかになった。さらに、その詳細な分子機構を解析する予定である。
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