研究概要 |
白血病の治療は抗癌剤による化学療法が主体であるが、時として致命的な合併症や副作用が問題となる。近年、新しい治療法として分子標的療法が注目されており、本課題ではより侵襲の少ない新たな白血病に対する分子標的療法の確立を目的とした研究を行った。 われわれは活性酸素(ROS)を介する白血病のアポトーシス誘導機梼について検討してきたが、この際、MPO(myeloperoxidase)がROSの産生調節に極めて重要な意義を有することを見出し、詳細な活性酸素種の同定を行った。緑茶成分のEGCGはROSを産生し、MPO陽性白血病細胞のアポトーシスを誘導した。MPO特異的阻害剤ABAH、ヘム合成阻害剤succinylacetone存在下では、EGCGによるROS産生およびアポトーシス誘導は認めなかった。さらに、MPO陰性K562細胞にMPOを強制発現させると、EGCGに対する感受性を回復するとともに、酵素学的にMPO活性を有さない変異MPO導入株ではEGCGの効果は認められなかった。以上より、MPOはROSの産生および白血病細胞のアポトーシス誘導に対して重要なkey regulatorと考えられた。さらに、アポトーシス誘導を来たす活性酸素種を同定するために、最近開発された新たな蛍光probe(AFP,HPF)を用いた検討では、hydroxy radical(-OH)によるDNA障害がアポトーシス誘導に直接働くと考えられた。この現象は、EGCGのみならずROSを産生することが知られている亜ヒ酸やアントラサイクリン系抗癌剤でも認められ、MPOを指標にしたROSをターゲットとした新たな白血病の分子標的療法の可能性が示された。さらに、DNAマイクロアレイ法による網羅的遺伝子解析の結果、HIF-1α遺伝子とその下流遺伝子(RNP-1,EGR-1,BNIP3,VEGF)の発現が上昇し、標的分子としてHIF-1αが重要であると考えられた。
|