我々は、骨髄由来細胞による心筋梗塞後心筋組織再生の可能性についてマウス心筋梗塞モデルを用いて検討を行ってきた。これまでの研究から、骨髄細胞を末梢に動員する効果のある顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)を心筋梗塞後に投与することにより、残存心機能と生命予後が改善するとともに間葉系幹細胞(MSCs)が骨髄から動員されて心筋組織に到達して心筋へ分化することをMSCsの細胞株であるCMG細胞を用いた実験によって突き止めた(Blood 2004;104:3581)。今回、細胞株ではなくnaiveなMSCsも、このような再生効果が認められるか検討を行った。しかしながら、梗塞巣において認められる骨髄由来の心筋細胞数のみによって残存心機能と生命予後の改善を説明することは困難であり、なんらかの機序がさらに加わっていると考えられた。そこで、骨髄造血幹細胞(HSCs)の関与について検討した結果、心筋梗塞後にG-CSFを投与することによって、MSCsとともにHSCs由来細胞が梗塞領域に到達してcardiac myofibroblastsならびにfibroblastsに分化し、これが心筋梗塞後のリモデリングを抑制して残存心機能と生命予後の改善に関与している可能性が示唆された。以上よりMSCsを用いた心筋梗塞後心筋組織再生には、HSCsの協調が不可欠であることが今回の研究から明らかとなった。現在、これらの研究成果は国際誌に投稿中である。
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