研究概要 |
(目的)我々は急性GVHDモデルマウスにHGFを投与するとHGFの組織再生作用・抗アポトーシス作用により腸管障害が抑制され、GVHDによる死亡率が低下することを明らかにした(J.Clin.Invest.107:1365,2001 Blood 104:1542,2004)。また、Edg-1リガンドアゴニストであるFTY720はリンパ球を二次リンパ組織から末梢血や臓器に遊走するのを抑制しGVHDを制御することも報告されている(J.Clin.Inverst.111:659,2003)。そこで異なる作用機所をもつHGFとFTYの併用療法の効果を検討した。(方法)9Gy照射BDF1マウスにB6マウス骨髄細胞と脾細胞を移入しGVHDを誘導した。HGFはヒトHGF cDNAをHVJ-リポゾーム法にて1週間間隔で遺伝子導入した。FTY720は胃ゾンデにて連日経口投与した。効果の判定は生存率、病理組織学的解析、サイトカイン遺伝子の発現にて判定した。リンパ球・リンパ球細胞亜集団はフローサイトメトリーにて解析した。(結果)1)生存率:GVHDマウスの生存率はHGFとFTY720の併用投与により単独投与に比し著しく改善した。2)病理組織学的変化:HGFとFTY720の併用投与により単独投与に比し著しく改善した。3)サイトカインmRNAの発現:HGFとFTY720の併用投与により単独投与に比し腸管におけるTNF-α,IFN-γmRNAの発現が著しく抑制された。4)末梢血リンパ球数:FTY720投与により末梢血リンパ球数が著しく減少した。(考察)HGFとFTYの二つの作用機所の異なる治療を併用することにより急性GVHDが著明に改善されることが明らかになった。これらの実験結果より、今後HGFとFTY720の併用療法の造血幹細胞移植への臨床応用が期待できるものと思われる。
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