研究概要 |
血球特異的ETS転写因子の新規クロストークを探す中で、われわれは新たにEts-1がEtsドメインを介して、T細胞の増殖やアポトーシス阻止に関与する転写因子Gfi-1のZnフィンガードメインと結合することを見出した。クロマチン免疫沈降法(ChIPアッセイ)により、実際にこれらの両転写因子が細胞内でアポトーシス関連bax遺伝子のプロモーターに結合していることが確認された。また、site-directed mutagenesisの結果から、Ets-1はGfi-1と結合することで、bax遺伝子の転写活性の抑制に協調的に働くことも明らかとなった。さらに、細胞のEts-1,Gfi-1の発現をsiRNAにより抑制すると、bax遺伝子の発現が高くなることも明らかとなった。 一方、PU.1には、赤血球や巨核球の発生と分化に重要な役割をする転写因子Gfi-1Bが結合し、それぞれの結合配列をもつレポーター活性を相互に抑制することを新たに見出した。マクロファージ系へと分化する503細胞に、PU.1遺伝子を導入するとMac-1陽性となるマクロファージ系細胞が増加したが、そこにGfi-1B遺伝子を同時に導入するとMac-1の陽性率が半分に低下した。また、ヒト臍帯血細胞にGfi-1B遺伝子を導入すると赤血球コロニーの増殖促進が見られるが、その系にPU.1遺伝子を同時に発現させると細胞増殖と赤血球コロニー形成の増大は著しく抑制された。臍帯血へのPU.1遺伝子の単独導入では、赤血球コロニーの出現は少なく、殆どの細胞が樹状細胞に形質転換した。すなわち、PU.1とGfi-1B転写因子は結合することで相互に拮抗的に働き、骨髄球の分化を部分的に抑制していることがin vitro, in vivoで示された。
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