研究課題
核移植ES細胞の生物学的特性を明確にすることを目的に、通常の方法によって樹立されたマウスES細胞とマウス核移植ES細胞との比較検討を行った。核移植ES細胞の形態については、おおむね通常のES細胞と同様の形態を示していた。すべての核移植ES細胞が安定的に長期の継代維持(約20継代)が可能であり、培養途中で未分化状態を維持できずに増殖停止してしまうような株は認められなかった。また、すべての核移植ES細胞株においてアルカリフォスファターゼ活性が認められた。細胞表面抗原の解析においても、通常の方法で樹立されたES細胞株と同様に、ほとんどの核移植ES細胞がSSEA-1抗原を発現していることが確認でき、逆に、分化マーカーであるSSEA-4を発現していないことも確認できた。また、遺伝子発現に関しては、核移植ES細胞株間で発現量に差があるものの、Nanog、Oct3/4、Rex-1、Stat3等の遺伝子の発現が確認できた。以上のことから、一度樹立された核移植ES細胞については、通常のES細胞と同様の表現型を示すことが確認できた。次に、核移植ES細胞の血液系細胞への分化能に関して、通常の方法で樹立されたES細胞における血液系細胞への分化能と比較検討を行った。栄養細胞を用いて誘導を行った結果、分化速度、分化効率は細胞株毎にかなり異なっていたものの、通常の方法で樹立されたES細胞株同様に、全ての核移植ES細胞株において、汎血球細胞マーカーであるCD45陽性細胞の誘導に成功した。本年度は、主に血液幹細胞が誘導できているか否かの検討を、マウスへの移植実験(骨髄移植実験)を用いて検討した。通常のES細胞で成功したという報告のある方法を踏襲して実施したが、血液幹細胞が誘導できたという明瞭な実験証拠を得ることには成功していない。今後さらに、分化誘導方法を改良して、実験を継続する予定である。
すべて 2006
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