研究概要 |
これまでに先天性赤芽球癆患者においてRPS19遺伝子の変異が病因となっていることを明らかにされた。研究者は新規のハイブリッドウイルスベクターを作製し患者造血幹細胞にRPS19遺伝子を強制発現させたところ、赤芽球形成能は正常値の60 70%まで回復し、正常RPS19の発現低下が赤芽球産生異常の原因となっていることを報告してきた。 そこでヒト臍帯血CD34陽性細胞においてレンチウイルスベクターを用いてRPS19に対するsiRNAを強制発現させ、RPS19の発現をブロックしたところ、赤芽球コロニー形成能の低下が認められた。またRPS19に対するsiRNAを強制発現させたCD34陽性細胞を液体培養したところ、赤芽球系細胞の増殖、分化が障害されていることが明らかとなり、siRNAでRPS19遺伝子発現が抑制された赤芽球前駆細胞は先天性赤芽球癆の病態モデルとなりうることを示した。(Blood,2005) さらにRPS19の発現低下と細胞分化障害および増殖抑制のメカニズムを探るために、血液細胞株K562細胞にsiRNAを用いてRPS19遺伝子の発現をブロックしたところ、著明にK562細胞の増殖が抑制された。これらの細胞は細胞周期の解析より、G1期停止に陥っていることが明らかとなった。また患者の異常RPS19遺伝子と同じ変異を加えたRPS19遺伝子を様々な細胞系列の細胞株に強制発現させたところ、赤芽球系細胞株で特異的にRPS19蛋白の発現が低下することが明らかとなった。これらの結果から、患者の異常RPS19遺伝子からのRPS19蛋白の産生障害が赤芽球系細胞特異的におこり、その結果赤芽球癆を発症している可能性が示唆された。今後、これらの細胞を用いさらに詳細な病態解析を進め、治療のための基礎研究を発展させる。
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