細胞膜上のミクロドメインであるラフトには、スフィンゴ糖脂質、コレステロール、種々のシグナル分子等が集積している。血小板膜上のラフトはコラーゲン(Col)刺激における血小板活性化の最上流において必須であり、その機能に細胞骨格が関与することがリンパ球などで知られている。そこでCol刺激血小板におけるラフトと細胞骨格の関係を検討した。方法として、アクチン重合阻害剤のサイトカラシンD(CytD)を100μMの終濃度で洗浄血小板に加えて処理し、1mMRGDS存在下に2μg/ml Col刺激を加え30秒間反応させた。Triton X-100を加え、ショ糖濃度勾配超遠心法を用いてラフトを分離した。このラフト分画を電顕用膜メッシュに載せ、乾燥後、2%酢酸ウランで染色して観察した。免疫染色はヒト抗GPVI抗体、さらに金粒子標識二次抗体で孵置し、同様に観察した。ラフトはvesicle様構造として観察された。ラフトの直径をランダムにおよそ200個計測したところ、Col刺激後のラフトの直径(160.97±65.38nm)は未刺激のラフトの直径(105.91±34.94nm)に比べて有意(p<0.01)に大きくなった。CytD処理した血小板では有意差はみられなかった。さらに一個のラフト上のGPVIの存在を示す金粒子数を数えたところ、未刺激血小板では1.6±2.1個観察されたが、刺激後では4.0±3.8個と有意(p<0.01)なGPVIの増加が観察された。CytD処理血小板ラフトの同様な検討では、GPVIの増加は刺激後も見られなかった。以上の結果より、血小板にCol刺激を加えるとラフトは相互に融合し大きくなると同時にラフト上のGPVIもそれにより増加すると考えられた。また、CytD処理により細胞骨格の再構成を阻害するとこのような変化が阻害されたので、Col刺激時のラフトの融合に細胞骨格の再構成が関与していると考えられた。
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