研究概要 |
粘膜関連リンパ組織(MALT)に発生する低悪性度B細胞リンパ腫であるMALリンパ腫は、節外性臓器に発生する悪性リンパ腫の主要な部分を占め、臨床的にも非常に注目を集めているリンパ腫である。 我々は、MALTリンパ腫に高頻度に認められる染色体転座t(11;18)(q21;q21)を詳細に解析し、t(11;18)(q21;q21)によって生ずる遺伝子変化の本態がAPI2-MALT1遺伝子融合であることを世界に先がけて明らかにした。API2ならびにMALTlに対するモノクローナル抗体を作製すると共にキメラ遺伝子を検出する高感度RT-PCR法を樹立した。さらに、MALT1はユビキチン化されてプロテアソームで急速に分解されるが、一度API2-MALT1キメラが形成されると安定化され、その半減期が著しく延長することを見出した。また、免疫沈降法とLC-MS/MS(液クロと質量分析計を繋げた蛋白解析装置)を組み合わせて、API2-MALT1に結合する蛋白質として、アポトーシスに深く関わるSmac,Htra2,Hsp71を同定した。HeLa細胞にAPI2-漁LT1を恒常的に発現する系を樹立し、UV照射やエトポシドによるアポトーシス誘導系を用いて、API2-MALT1に抗アポトーシス作用があることを実証した。API2-MALT1の抗アポトーシス作用の少なくともひとつは、Smacを介したアポトーシスを抑制することであることが示された。今後、API2-MALT1融合遺伝子による抗アポトーシス作用やNF-kB活性化作用をさらに分子的に明らかにしていくと同時に、新しい診断、治療へ向けての臨床応用を図っていく。
|